入浴介助で介護士が知っておくべき13の注意点と手順

入浴介助において、手順や方法などをあらかじめ知っておいたほうがいいというのは、どの介護士さんでもわかっていることです。

しかし、その手順や方法において、意外にも、入浴介助を行う介護士さんの配慮が不足しがちなことがある、というのはご存知でしょうか?

このページでは、入浴介助を行う介護士さんが、入浴介助の前に、あらかじめ何をやっておかなければならないのか、入浴中に必要な介護士としての配慮には、どのようなものがあるのかをすべてご紹介していきます。


目次

入浴介助で知っておくべきこと

介護施設などでは、基本的に午前・午後に分けて、ほぼ毎日入浴介助が行われています。

そこで、毎日の入浴介助で、これだけは改めて知っておいてほしいということをお伝えしていきます。

浴室・脱衣室の室温管理について

浴室や脱衣室の室温管理は、入浴介助を行う上では必須です。

特に、冬季の浴室や脱衣室はかなり冷え切っています。温かいお部屋や暖房の効いている廊下と比べると、その温度差は10度以上になることもあります。

浴室や脱衣室が寒い理由としては、2つ。

1つ目は、換気のために浴室や脱衣室の窓を開放しているためです。

施設の浴室は、カビの発生を抑えるために、入浴時間以外は窓を開放していることが多く、そのため浴室や脱衣室の温度は外気温とほぼ変わりません。

夏季はそれほどでもありませんが、冬季はかなり冷え切ってしまっています。

2つ目は、浴室や脱衣室が広い、ということがあげられます。

家庭の浴室や脱衣室と比べると、当然、施設のほうが浴室や脱衣室は広くとってあります。そのため、暖房をつけてもなかなか暖まりにくく、他の暖かいお部屋との気温差がなかなか縮まりません。

冬季は、入浴の30分前から暖房を入れても、なかなか暖まっていないことも多いでしょう。

この2つの理由から、施設の浴室や脱衣室は、入居者にとってヒートショックなどを起こすリスクが高い場所になってしまいがちなのです。

浴室は暖まるのにさらに時間がかかる

脱衣室は暖房を入れておけば暖まっていきますが、浴室はそうではありません。

浴室には暖房がついていないことも多いため、脱衣室からの暖かい空気だけではなかなか暖まらないのです。

そのため、床は冷え、浴室全体もまだ寒い中、入居者を入浴させることはヒートショックなどのリスクを伴うだけでなく、「快適な入浴」とはほど遠い入浴サービスとなってしまいます。

シャワーなどを使っていれば、浴室全体はそのうち暖まってはきますが、裸で濡れた状態では、入居者は常に寒さを感じていることも覚えておきましょう。

特に、最初に入浴する入居者は、冷えた床に足をつけて、冷えた浴室でシャワーが温かくなるまでの間は、本当に寒い思いをしています。

脱衣室の暖房の温風も冷たく感じることがある

脱衣室でつけている暖房の温風も、入浴直後の入居者にとっては冷風のように感じることがあります。

これは、身体が温まっていて、温風の温度のほうが体の表面温度よりも低いために、冷風のように感じるためです。

せっかくお風呂で温かい思いをした入居者に、これではまた寒い思いをさせてしまうことになります。

入浴介助でやるべきこと

上述したように、浴室や脱衣室では、入浴介助を受ける入居者は、とても寒い思いをしています。

では入浴介助を行う介護士として、あらかじめ何をやっておけばいいのか、入浴中にはどのような配慮が必要なのかについて、ひとつずつお伝えしていきましょう。

入浴後の着替えなどを確認しておく

入居者が入浴後に着替える衣類などが、ちゃんと準備されているか確認しておきましょう。

また、入浴中に本人専用のシャンプーやシェーバーなどがある場合は、入居者を浴室にお連れする前に、必要なものがそろっているかも確認しておきます。

その他、入浴中に使うシャンプーやボディソープ、タオルやバスタオルなどが不足していないかも、事前にチェックしておくといいでしょう。

浴室・脱衣室には朝から暖房を入れておく

冬季は本当に、浴室や脱衣室は暖まりにくいことが多いです。

そこで、まずは入居者が脱衣室に入ったときに、「この部屋は暖かい」と思えるような室温にしておく必要があります。

そのためには、朝一番に暖房を入れることです。以下、具体的な動きをご紹介します。

浴室と脱衣室の窓を閉め、浴室へと続くドアは開放しておきます。その際には、換気扇のスイッチもオフにしておきましょう。

暖房を入れる時間は、入浴開始時間から逆算して、2~3時間前がいいでしょう。暖房の温度調節は、22~24度で設定します。これは、脱衣室や浴室の広さによって調整してください。

ポイントとして、脱衣室は他のお部屋よりも少し暖かく感じる程度にするといいでしょう。脱衣室では裸になりますから、服を着ていて少し暑いと思うぐらいがちょうどいいです。

バイタルチェック(血圧、脈拍、体温測定)は必ず行うこと

毎日のバイタルチェックは、主に看護師さんの仕事ですが、入浴介助を行う介護士さんは、事前に血圧や体温に異常がないかを看護師さんに確認するようにしましょう。

その上で、介護士さんは入浴直前まで、入居者に体調が悪くないかなどを尋ねたり、表情の観察をしながら入浴介助を始めるようにしましょう。

「看護師が大丈夫って言ったから」と、まったく入居者の観察をしない介護士さんもいます。

入浴介助を行う介護士さんは、託された責任があるという自覚を持って、介助を行うようにしましょう。

全身の観察を必ず行うこと

入浴介助を行う介護士さんは、入居者の身体の状態もしっかりと観察するようにしましょう。

どこかケガをしていないか、アザや褥瘡などになっていないかなど、細かくチェックをします。

普段は自立している入居者でも、本人も気づかないうちにケガをしている場合があります。極端に裸を見られるのを嫌う方でなければ、できる限りチェックさせてもらうといいでしょう。その際は、同性同士にするなどの配慮も忘れずに。

その他にも、腕や足などを動かした際に、痛みを訴えたりしていないか、入居者の表情や口調にも注意を払っておくことを覚えておきましょう。必要に応じて、看護師さんにみてもらっておくようにすると安心です。

浴槽内のお湯の温度を測っておく

いざ、洗身まで終えた入居者が浴槽に入ろうとしたら水だった。という経験はないでしょうか?

このようなことのないように、介護士さんは入浴前にきちんとお湯の温度を測っておく必要があります。

水だった場合、介護士さんもがっかりしますが、入居者はそれ以上にがっかりします。

その日はシャワーのみ、ということがないように、忘れずに確認しておきましょう。

浴室は入浴直前にシャワーを出して一気に暖める

入居者が浴室に入って、まず感じることは、「床が冷たい・浴室の中が寒い」ということです。

そこで、この2点を「暖かい」と感じてもらえるようにします。

まずは、入居者が脱衣室で洋服を脱いでいるときに、浴室のシャワーを出しておきます。できれば、熱めのシャワーがいいでしょう。

シャワーの湯気で、浴室全体を一気に暖めるためです。そうすることで、入居者が浴室に入ったときに暖かいと感じることができます。

たまに、お湯がもったいないからという理由で、超節約型の介護士さんがいます。節約はもちろん大切なことですが、入居者が風邪などをひいて入院や病院に行くことになるほうが、さらにお金がかかることは知っておきましょう。

次に、床にはシャワーや浴槽のお湯を何度もかけながら、入居者の通るルートを暖かくします。その際は、水や熱湯になっていないか、くれぐれも注意しておきましょう。

その後、入居者の座るシャワーチェアにもお湯をかけて、暖めたあとに座ってもらうようにします。背もたれや肘置きの部分にも、忘れずにお湯をかけましょう。

洗身・洗髪中も入居者が寒さを感じないようにする工夫

これを意外とやらない介護士さんは多いです。

洗身中や洗髪中は、入居者の身体はどんどん冷えていきます。そのため、「あー寒い!はやくして!」と大声を上げる入居者もいるでしょう。

介護士さんは、そのことに気づいていながらも、なぜか少しでも早く洗身や洗髪を終わらせることを優先する傾向にあります。

なぜ、急ぐ必要があるんでしょうか?ちょっと1~2杯のお湯を身体にかけたからといって、入浴時間に大きなロスは発生しません。

それは、ただ単に「面倒くさいから」という理由以外に思い当りません。

それがきっかけとなって暴れ出す入居者や、大声を出して機嫌を悪くする入居者の対応をするほうが、その後の入浴介助に支障が出る場面は多々あります。

洗身中や洗髪中の介護士さんの配慮として重要なのは、入居者が寒さをあまり感じないですむようにすることです。肩や太ももにタオルをかぶせるようにかけて、適度にお湯をかけながら入浴介助を行うようにしましょう。

長時間の入浴には注意すること!!

冬季は、身体も冷えていますから、つい浴槽内で長湯になってしまう入居者は多いです。

介護士さんも、「今日ぐらい、いいか」という気持ちでいると、あとで大変なことになる場合があります。このことについては「入浴中に多い6つの事故と、事故を防止する方法」で詳しく説明していますので、ぜひ読んでおいてほしいと思います。

また、浴槽内で意識消失などで溺れる事故も起きています。介護士さんは、入居者が常に見える位置で見守るようにしましょう。

入浴後は温風が直接当たらないようにする

せっかく温まった身体を、脱衣室の温風で冷やしてしまうことのないようにしましょう。

脱衣所の暖房の風向は、できるだけ上を向けておくようにします。そうすることで、入居者の身体に直接風が当たらないようにすることができます。

まとめ

入浴介助後の状態観察まですることが大切

入居者は、入浴後に体調を崩すことがあります。

長湯したことで湯疲れした場合や、入浴後に身体が冷えてしまったことで風邪をひいてしまうケースなどもあります。

ひとりでその方をずっと観ることはできないので、入浴介助をした介護士さんは、他の介護士さんにもしっかりと申し送りを行うことが大切です。

入浴時に何か変わったことはなかったか、いつもより長湯してしまった、入浴中に寒気を訴えていたなど、細かいことでも情報を共有しておくことで、何か起こったときの対応はかなり違ってきます。

入浴させたら終わり、と考えずに、その後に続く入居者の生活のことまで考えることができる介護士を目指しましょう。

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コメント

  1. ゆっち より:

    サイトをみている皆さんに質問です。
    浴室と脱衣場の寒暖差がある時に皆さんはまず、浴室で身体を拭いていますか?それともバスタオルが湿気ってしまうから濡れた状態で浴室から出しその後拭きますか?

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