介護記録を書く上で、文章を書くのが苦手な人でもポイントを押さえて書くことで、分かりやすい介護記録を書くことが出来るようになります。
「介護記録を書くのに時間がかかって、いつも残業ばかりしている」
「記録を書くのが早い人は、どんなやり方で書いているんだろう」
このように、介護記録は介護士さんにとって常に時間のかかる業務のひとつとして悩ませ続けています。
そこでこのページでは、5W1Hを使った介護記録とはどうすれば書けるのかをご紹介していきます。
これまで5W1Hがよく分からなかったという人でも、例を挙げながら解説していくので、理解しやすいと思います。
目次
介護記録の5W1Hとは
そもそも、介護記録を書く上で役立つ「5W1H」とは何なのか。
言葉は知っていても意味まではよく分からないという人のために、まずは5W1Hについて説明していきましょう。
5W1Hは分かりやすい文章を作るための基本
5W1Hは、5つの「W」と、1つの「H」で構成されています。
- When(いつ)
- Where(どこで)
- Who(だれが)
- What(なにを)
- Why(なぜ)
- How(どうした)
文章を書くときにはこの5つの「W」と1つの「H」を意識して書くことで、より具体的で分かりやすい文章になります。
ではこれを、介護記録を書く際の5W1Hとして簡単な例を入れながら、ひとつずつ解説していきましょう。
介護記録の5W1Hで意識すること
【When(いつ)】
When(いつ)は、「9:30」「16:40」などの具体的な時間を記入します。午前中、夜間などの時間が曖昧な言葉は使わないようにします。
【Where(どこで)】
Where(どこで)は、「居室内のトイレで」「食堂の自分の席で」などの具体的な場所を記入します。特にフロアのような広い場所では、「フロア内のソファにて」など、位置が分かりやすいように書きます。
【Who(だれが)】
Who(だれが)は、「佐藤さんが」「介護士の田中が」などの名前を記入します。記録内に他の利用者が出てくるときは名前を「Nさんが」とイニシャルで書く場合もあります。
【What(なにを)】
What(なにを)は、「嘔吐した」「転倒した」「体操に参加した」などの事実を記入します。実際に起きたことを書くようにします。
【Why(なぜ)】
Why(なぜ)は、「気分が悪いと言っていた」「歩行中につまずいた」「退屈だと言っていた」などの原因や根拠を記入します。What(なにを)とつなげて書くことで、より具体的な文章になります。
【How(どうした)】
How(どうした)は、「病院を受診した」「しばらく車いすを使用することにした」「参加して気持ちがすっきりしたと言っていた」など、対処したことやケア後の本人の言動などを具体的に記入します。
このように、簡単な例を挙げながら読んでみると、少しはイメージしやすかったのではないでしょうか?
では次に、今挙げた例を参考に、ひとつの文章になるように介護記録の例文をご紹介していきましょう。
5W1Hを使った介護記録の例文
9時30分、佐藤さんが自分の居室のトイレで嘔吐される。朝食を食べ終えて30分ほど経った頃より、フロアのソファで休まれていた佐藤さんから気分が悪いという訴えがあった。トイレに行きたいと仰るので介護士の田中がトイレへお連れすると、吐き気がすると仰りそのまま便器内に嘔吐される。
9時35分、看護師を呼び状況を説明する。平成〇年〇月〇日にも同じようにして嘔吐されたことがあるため、嘱託医と相談し、一度〇〇病院を受診することとなった。
10時10分、〇〇病院へ受診のため出発される。
11時15分、〇〇病院より戻られる。逆流性食道炎とのこと。受診結果を看護師よりご家族へ連絡する。
佐藤さんの担当者である介護士の田中が、看護師、ケアマネ、介護リーダーと相談し、当面の対応策を立てる。佐藤さんは食後すぐに居室に戻られることも多いため、食後から30分程度はフロアのソファで休んでいただくこと。その際、介護士はこまめに佐藤さんに声をかけ、ご様子を伺っていくこととする。
5W1Hで文章を書くコツは長文にしないこと
5W1Hをすべて入れて文章を書こうとすると、とても長い文章になってしまいがちです。
そうなってしまうと、後から介護記録を見直す際にとても読みずらい文章になります。
5W1Hで介護記録を書くときは短い文章になることを意識しながら、時間と場所(WhenとWhere)、事実と根拠(WhatとWhy)をそれぞれつなげて書くようにすることが大切です。
そしてそこに誰が(Who)を入れ込むことで、5つの「W」はクリアできます。
どうした(How)を簡潔に書くためには、「どんな対処をしたのか」「本人の言葉や行動」に絞って書くようにすると、客観的で分かりやすい文章になります。
主観と客観的事実は混同させないようにしよう
介護記録でよく見られるのが、主観と客観的事実を混同させて書いている場合です。
主観とは、介護士さんが自分から見たときの、利用者の様子です。
「気分が悪そうにしていた」「楽しそうにしていた」「うれしそうに喜んでいた」などは、すべて介護士さんから見た主観となります。本当に気分が悪いのか、楽しかったのかは本人に聞かないとわからないことですよね。
客観的事実とは、利用者本人が実際に行っていたことや、利用者本人から出た言葉のことを言います。
「気分が悪い」「今日は楽しかった」「とてもうれしかったです」などは、利用者本人が実際に発した言葉です。自分の部屋を掃除していた、他の利用者とトランプをしていたなどの行動も含めて、これらが客観的事実となります。
では、この主観と客観的事実が混同している場合はどうなるのかというと、「他の利用者とトランプをして楽しまれる」となってしまいます。どこがおかしいか、お気づきでしょうか?
「他の利用者とトランプをして」が客観的事実、「楽しまれる」が主観です。
このような介護記録の書き方は、介護現場では本当によく見られます。
主観と客観的事実を分けて書くことが大切
介護士さんの主観で書くことが決して悪いというわけではありません。
主観と客観的事実が混同しているのが問題なんです。
先ほどの例のように、本人が言ったわけでもないのに「楽しまれる」と書いてしまうのはおかしいですよね。
介護士さんの主観で書くことの多いケースとしては、言葉を話すのが難しい寝たきりの利用者など、ご自分から訴えることのできない利用者の介護記録を書く場合です。
このようなときは、日ごろから利用者を観察している介護士さんが気づいたことや、どのような対処が必要と考えられるのかを書いておくことで、後日ケアマネや看護師が記録を見た際にケアのヒントになることが意外とたくさんあります。
その際にも、主観と客観的事実はきちんと別の行に分けて書いておくことが大切です。
まとめ
介護記録の5W1Hは、知っておけばそれだけで記録を書く際に役に立つということがお分かりいただけたと思います。
5W1Hがよく分からなかったという人でも、このページを何度か読み返してもらえれば、介護記録の書き方になぜ5W1Hが必要とされているのかが段々と分かってくると思います。
そして、理解したあとは主観と客観的事実に気をつけながら介護記録を書くように意識していけば、あなたの書く介護記録が自然と職員間の情報共有につながっていきます。
これを機会に、自分の職場の介護記録の在り方を他の介護士さんとも話し合ってみるのもいいかもしれません。