食事介助の7つのポイントと声かけのコツ

施設における食事介助は、現場で働く介護士さんなら誰もが行うことになる介助のひとつです。

しかし実際の介護現場では、食事介助が上手な介護士さんもいれば、そうではない介護士さんもいます。

相性の問題や、性格的なものも影響している場合もありますが、介護のプロとしてそれを言い訳にしてはいけない気がします。

食事の摂取量が減って、ダイレクトに影響を受けるのは、実際に介助を受ける入居者ご本人なんですから。

そこで、食事介助を行う上でのポイントや声かけのコツなどがあれば、ぜひ知りたいと思っている人も多いのではないかと思い、このページでは食事介助で気をつけたいポイントや、声かけの方法などをご紹介していきます。

意外と見落としがちなポイントもあるかもしれないので、おさらいのつもりで読み進めていきましょう。


目次

食事介助のポイント

食事介助を行う上で、気をつけてもらいたいポイントは以下の7つになります。

  • 覚醒状態の確認
  • 口腔内の確認
  • 姿勢の確認
  • 口周りの確認
  • 嚥下状態の確認
  • 食事介助の時間
  • 食事形態の見直しの必要性

ひとつずつ、みていきましょう。

覚醒状態の確認

食事介助をする上で最も基本的なことですが、脳や身体がしっかりと目覚めているかをまずは確認しましょう。

ウトウトしていたり、目覚めたばかりの状態で食事介助をしても、誤嚥を誘発するなどのリスクが高くなるばかりで良いことはひとつもありません。

何より、寝ぼけながら食事をしても全然美味しくないですし、入居者もせっかくの食事を楽しめません。

まずは話をしたり、お茶を飲んだりしてしっかりと目覚めてもらうことに時間を割いたほうが、結果的には安全でスムーズな食事介助が行えます。

口腔内の確認

口の中が目覚める感覚、というのを私たちは毎日感じていると思います。

私たちは朝起きたら口をゆすいだり、歯磨きをしたり、お茶を飲んだりします。それは、口の中が乾いていたり、ネバネバしたりする違和感を取り除いてスッキリさせるために行っていることです。

入居者も同じで、口腔内に違和感が残ったまますぐに食事なんてしたくありません。

まずは口の中を目覚めさせ、デフォルトの状態に戻してから、ゆっくりと食事介助を行いましょう。

食事前に舌を動かしたり、口の周りの筋肉をほぐすなどの口腔リハビリを行うことも非常に有効です。

義歯の装着忘れはないかも、食事介助の前には必ず確認するようにしましょう。

姿勢の確認

食事のときの姿勢が崩れていると、嚥下機能の低下した入居者にとっては命に関わる事故につながるおそれがあります。

食事の姿勢にはテーブルでの食事の姿勢、ベッドでの食事の姿勢など、食事介助を行う上で入居者に合った好ましい食事の姿勢というものがあります。

詳しくは食事介助の基本的な手順と16の注意点に載せていますので、そちらを読んでもらえればと思います。

口周りの確認

食後に口腔ケアや排泄介助をしていると、入居者の口の周りがカピカピになっているのを見たことのある人も多いのではないでしょうか。

その原因は、食事のときに口元からこぼれた食べこぼしが、きれいに拭き取られていないためです。

また、たまに口の周りに発疹やかぶれが出る方がいますが、そのほとんどは口の周りの清潔が保たれていないことが主な原因です。

食事介助をしていて、その都度口の周りを拭いていてきれいに見えたとしても、実際にはきれいに拭き取れていないという場面を意外と多く見かけます。

食べこぼしの多い入居者で、口の周りをその都度きれいに拭くのは当然ですが、食事が終わったときに再度きれいな面のおしぼりなどで拭くようにすると、時間が経っても清潔を保つことができます。

拭くときは強く擦り過ぎないように注意してください。

嚥下状態の確認

食事介助をしていて、入居者がしっかりと食事を飲み込むことができているかを常に観察しながら行うことは食事介助の基本です。

食べ物を噛む回数が少なすぎないか、丸飲みしていないかなどの咀嚼の観察や、飲み込むときにムセはないかなどを観察しながら食事介助を行いましょう。

飲み込むのを確認するのに喉元ばかりに注視し過ぎて、入居者の頭部が上向きになっているのに気づかないパターンもよくあるので注意しましょう。

食事介助の時間

食事介助を行う時間は、基本的には30分~45分が目安とされています。

入居者は食べるだけでも体力を使うので、全量摂取させたいからと1時間以上も食事介助を行うことはかえって負担になる場合があります。

飲み込みに時間がかかる方や、なかなか口を開けてくれない方には、自然な飲み込みや開口を促すようなテクニックが使えることもあります。

人それぞれですので特にこれといった正解はありませんが、例えばアゴの下を指で軽く押さえて飲み込みを促す方法など、熟練の介護士さんならいろんな方法を知っていることもあるので相談してみるのもいいでしょう。

長時間の食事は胃へ負担をかけ続けることにもなるので、食事に時間のかかる入居者は食後の嘔吐などにも十分に注意しておくようにしましょう。

食事形態の見直しの必要性

食事介助中に食べにくそうにしているしている食べ物はないか、飲み込みにくそうにしていないかなどを観察しながら、常に食事形態の見直しの必要性も視野に入れながら食事介助を行いましょう。

食事形態を検討するカンファレンスなどでは、日常的に関わっている現場の介護士さんの意見がとても参考になります。

食事中の様子などを日々の介護記録に残していくとともに、その都度介護リーダーや看護師等とも情報を共有しておくことで、入居者により安全な食事を提供できるようになります。

「いつも同じだから」と思わずに、毎回新しい目線で食事の様子は観察していくようにしましょう。

食事介助のときの声かけのコツ

食事介助をしているときでも、声をかけながら介助を行うのが基本です。

仕事に慣れると、スピードを重視して声かけもせずに黙々と食事介助をしている介護士さんや、他の介護士さんとおしゃべりしながら介助をしている介護士さんを見かけることがありますが、それでは入居者は何を食べさせられているのかわからず不安で、食事を楽しむことはできません。

食事を食べてくれない原因は、声かけが不足している場合もあるということをまずは理解しておきましょう。

何を食べるのかをその都度説明すること

認知症や寝たきりの入居者でも、ちゃんと耳は聞こえます。

言葉の理解はできないかもしれませんが、それでも「魚」や「野菜」などの簡単なワードは理解してくれていると信じて、きちんとひとつひとつの声かけを行うことが大切です。

  • 「食事にしましょうか」
  • 「今日は焼き魚ですよ」
  • 「酢の物は酸っぱくないですか」
  • 「みそ汁を飲みませんか」
  • 「今日はデザートにゼリーがありますよ」

など、食べるものを説明して一言添えるだけで、食事介助の質はグンとアップします。

声のトーンをひとつ上げてみよう

同じ声かけでも、声のトーンが違うだけでその印象はかなり違ってきます。

簡単に言うと「余所行きの声」で声かけをしてみようということです。

これは誰でも出来ることなんですが、仕事に慣れてしまっている人の声かけのトーンは、自分が思っているよりもかなり低いということに気づけている人はあまりいません。

「大きな声ではっきりと」ではなく、「落ち着いた声でトーンを上げて」声かけをすることを意識しましょう。それだけで、入居者は安心して食事介助を受けることができます。

いきなりは恥ずかしいと思う人もいるかもしれないので、まずはひとりでこっそり練習してみましょう。

目を閉じて食事の介助を受けてみてほしい

みなさんは実際に食事介助を受けたことがあるでしょうか?

私の職場では、定期的に介護士さんが介護士さんに目隠しをして食事介助を行うという研修を行っています。

雑で荒い食事介助と、優しい食事介助の両方を自分が体験してみることは、その後の仕事に対するスタンスにも大きな影響を与える場合があります。

「あれを体験したら、入居者には同じ思いをさせたくない」

「自分が今までどれだけ入居者を無視していたのかがよくわかった」

などの意見は、実際に介助を受ける立場になってみて、本当に初めてわかったことなんだろうと思います。

入居者目線になって考えることは、実際のところは体験してみないと本当には理解できないんじゃないと思って始めたことですが、確実にその成果は出ていると感じます。

前述した食事介助のポイントや声かけの方法を改めて読み返しながら、イメージでもいいので実際に自分が介助を受けているところを想像してみると、なにが大切で、なにがやってはいけないことなのかが理解できると思うので、ぜひやってみてほしいと思います。

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