介護施設や病院で提供される6つの食事形態の種類

介護施設や病院で提供される食事は、基本的にはその方に合った食事が提供されるように決められています。

入居者(患者)が安全に、そして安心して食事を食べることが出来るようにするためには、食べやすい大きさにカットされた食事や、飲み込みやすい食事に形状を変化させて提供することが求められるためです。

そこでこのページでは、食事形態の種類にはどのようなものがあり、そしてそれはどのような状態の方に提供されるものなのかということをご紹介していきます。


目次

食事形態の種類

食事形態の種類には、以下の6つがあります。

  • 常食(普通食、通常食)
  • 刻み食(極刻み食も含む)
  • ソフト食(軟菜食)
  • ミキサー食(嚥下食)
  • 療養食
  • 流動食(濃厚流動食)

ひとつずつ、見ていきましょう。

常食(普通食、通常食)

主に食事に関しては自立されている方や、飲み込みのスムーズな方に提供されることの多い食事形態です。

私たちが普段食べている食事とほぼ同じですが、一部の食材に限り、食べやすい大きさにカットされた状態で提供されることもあります。

歯で噛み切りにくいもの、例えば肉類やイカなどの魚介類は、食べやすいようにカットされて提供され、安全に食事をしていただけるように配慮されています。

お茶などの飲み物も、とろみなどは付いていない普通の飲み物が提供されることがほとんどです。

施設や病院によっては、常食のことを通常食や普通食と呼ぶなど、呼び方が違うことがありますが種類は同じです。

刻み食(極刻み食も含む)

刻み食は、常食の方と比べて嚥下機能(飲み込む力)が低下、もしくはやや低下している状態の方に提供される食事です。

刻み食にはいくつかの種類があり、「一口大」「荒刻み」「極刻み」などがあります。

「一口大」は、メインの副食などを食べやすいように一口サイズにカットされて提供されます。常食の場合は食材によりけりですが、こちらは毎食一口サイズにカットされて提供されるようになっています。

「荒刻み」は、一口大にカットされた食事をさらに細かくカットして提供される食事となります。一口大では飲み込む際などに誤嚥(ムセ)や窒息のおそれのある方への食事形態で、特養などは比較的この荒刻みの方が多い傾向にあります。

「極刻み」は、荒刻みをさらに細かく刻んで提供する食事です。読んで字のごとく、刻みの「極み」ですね。すでに細かく刻んであるので、噛む回数が少なくて済むことから、食べ物を噛む力の低下している方や丸飲みの多い方などに提供されます。

ただし、極刻みについては、嚥下機能の低下している方への提供は誤嚥のリスクを高めることにつながるおそれもあることは、覚えておきましょう(小さすぎる食べ物が誤嚥を誘発することがある)。

主食(粥食)の種類に関しては、後述する「粥食の種類」で詳しく解説していきます。

ソフト食(軟菜食)

ソフト食は、肉や魚などを一度すり身状にして再形成されたものや、繊維質の多い野菜などを湯通しして軟らかく食べやすいように工夫された食事です。

ソフト食の特徴として、食べ物の原型が分からなくなってしまっているミキサー食と比べて、形が残っている食事が多い点が挙げられます。

例えばメニューが煮魚の場合、一度魚をミキサーですり身状にしたあとに、あとで魚の形に寄せて再形成されます。その後、とろみをつけた煮汁をかけて完成です。

ソフト食については、様々な食品会社が独自の技術で作っていることもあり、作り方は様々ですが、どのソフト食も舌で押しつぶせるぐらいの固さや、野菜なども簡単にほぐれる固さになっているものが多いです。

上述した刻み食との併用食として、飲み込みずらい食べ物だけソフト食を取り入れることもあります。

ミキサー食(嚥下食)

ミキサー食は、主食(ごはんや麺類など)と副食(肉や魚、野菜など)をミキサーにかけて、出汁などで食事の味を調えて提供される食事です。

ミキサー食で提供する形状はペースト状ですが、水分の多い食材はどうしても水っぽくなってしまうため、誤嚥予防(ムセ予防)のためにとろみ剤を使って固さを調整することもあります。

注意したいのは、とろみ剤を入れすぎて固くなりすぎてしまうことがある点です。お茶などの水分とは違い、食事のときに使用されるとろみ剤の量まで細かく決められてはいない施設や病院も多いため、使用量の目安が分からないまま使ってしまうと食事中の事故につながるおそれがあります。

嚥下状態が悪いからミキサー食になっているということを、くれぐれも忘れないようにしましょう。

とろみ剤の使い方については、食事介助でとろみ剤を使うときに知っておくべき注意点でご紹介していますので、一度は目を通しておきましょう。

療養食

高血圧や糖尿病などの疾患(持病)のある方に提供される食事です。

過去に心筋梗塞や脳梗塞などの既往歴のある方や、病症状の進行をできるだけ抑えたい場合などに、医師の指示(食事箋や指示箋)によって提供されます。

高血圧の場合は減塩食、糖尿病は糖尿病食、腎臓の悪い方には腎臓病食、膵臓などに疾患のある方は脂質コントロール食など、療養食には様々な種類があります。

このような療養食での食事療法は、管理栄養士が身長や体重、性別や年齢などから算出したデータをもとに、その方に合った食事を提供するために日々現場の介護士さんや看護師さんと連携を図りながら調整していきます(もちろん医師やケアマネも含みます)。

流動食(濃厚流動食)

流動食は、寝たきりなどで嚥下機能が著しく低下し、口から食事を摂ることができない方のために、チューブを用いて直接胃に栄養を届ける食事(経管栄養)です。

経管栄養で多いのは、鼻からチューブを挿入して直接胃に栄養を流し込む「鼻腔栄養」と、手術で胃に穴を開けて直接栄養を流し込む「胃ろう」があります。

鼻腔栄養は鼻にチューブが入ったままになっていることも多いため、違和感からたまにチューブを抜いてしまう方がいます。そのため、病院などでは自分でチューブを抜いたりしないように、手にミトンをはめたり、両手を縛ったりするところはいまだに多いのが現状です。

施設では身体拘束は禁止されていますから、施設によっては食事のときだけチューブを入れて、食事が終わったら抜いてくれる看護師さんも多いです。

ただし、胃ろうチューブ(パッチ)は抜いてしまったら病院で再度入れてもらわないといけないため、そうなるとご本人にも身体的な負担がかかります。

そのため、誤って抜いたり抜けたりしないように、タオルなどを当てて胃ろう部をガードするなどの工夫がされています。

また、施設では少ないですが、流動食の種類には他にも「腸ろう」というものもあります。

胃を手術していたり、胃がんなどの進行で胃ろうの造設ができない場合、腸に手術で穴を開けて直接栄養を流し込むための方法です。

腸ろうの場合は、胃と比べて吸収に時間がかかるため、時間をかけて栄養剤を入れる必要があります。

こちらも万が一パッチが抜けてしまうと大変なので、取り扱いには細心の注意が必要です。

粥食の種類

提供される食事の主食は、常食であれば普通の固さのご飯ですが、刻み食やソフト食の場合だとご飯の代わりにお粥が提供されることが多いです。

粥食の種類には、一般的な施設では以下の5つがあります。

  • 軟飯:普通のご飯より軟らかめに炊かれたご飯
  • 全粥:普通のお粥
  • 7分粥:普通のお粥より少し水分が多めのお粥
  • 5分粥:7分粥より水分が多いお粥
  • 3分粥:5分粥よりさらに水分が多いお粥

軟飯から3分粥になるにつれて、お粥に含まれる水分量が増え、胃にかかる負担は軽くなります。

施設などで多いのは軟飯か全粥ですが、ミキサー食の方にはお粥をミキサーにかけてペースト状にしたものが提供されます。

お粥の水分が多くなると喉を通るスピードも速くなるため、そのせいで誤嚥してしまうケースもあります。食べさせやすいからと安易にお粥の種類を変更するのは危険です。

また、ミキサーにかけたお粥は時間が経つと水分が出てサラサラしてくるので、提供の途中で適量のとろみ剤で固さを調整することがありますが、くれぐれもとろみ剤を入れすぎて固い糊状になってしまわないように注意が必要です。喉に張り付いて飲み込めなくなり、窒息のおそれがあります。

まとめ

食事形態の種類を理解しておくと、入居者の嚥下状態に合わせた食事を考える際、どの食事形態がその方に合ったものかを決めるときの判断材料の知識として役に立ちます。

もちろん、最終的に決める場はカンファレンスや担当者会議など、管理栄養士をはじめ、看護師や歯科衛生士が集まる場になると思いますが、普段から一番身近で入居者を観察している私たち介護士の意見も非常に重要となってきます。

自分の職場の食事形態の種類にはどのようなものがあるのかをまだ把握していないという人は、リーダーに質問するなどして理解しておくことをおすすめします。

まずは、入居者に安全な食事を提供できるようにしていきましょう。

スポンサーリンク

SNSでもご購読できます。

コメント

コメントを残す

*