読みやすい介護記録の書き方のための3つのコツ

実際の介護の現場で働く介護士さんが、特に時間のかかる業務のひとつとして悩んでいるのが、「介護記録の書き方」についてです。

介護記録の書き方については、どこの介護現場でも同じような悩みを持っている介護士さんがとても多く、「もっと効率的に書く方法はないのか」「もっと上手く書くコツはないのか」と、悩みながら日々の記録をしています。

施設や事業所としても、できるだけ介護士さんの介護記録の記入にかかる時間外業務やサービス残業を減らしたいとは考えているものの、現実問題としてはなかなか改善できていないのが現状です。

そこでこのページでは、介護記録の書き方を、実際の介護現場で働く介護士さんからの数々の意見をもとに、いくつかの「介護記録を書くコツ」としてご紹介していきます。

介護1年目の人が読んでも理解できるように、なるべく分かりやすい言葉で表現していくので安心してほしいと思います。



目次

5W1Hにこだわりすぎないようにしよう

介護記録の書き方で、よく「上手に書くコツ」として教えられるのが5W1Hを使った記入方法です。

確かに5W1Hにそって介護記録を書くというのは、分かりやすく客観的な記録を書く上で大切なことではあるんですが、介護士さんとしては「また5W1Hか」「よく聞く言葉ではあるけど意味が分からない」という意見のほうがまだまだ圧倒的に多いのが事実です。

介護を仕事として続けていく上で、勉強して学習していくことは大切です。ですが、なかなかそのような勉強をする時間まで作れない環境で働く人も実際にはたくさんいます。

理解できていないのに、頭ごなしに「介護記録は5W1Hで書くように」と言われても、書けるはずはありませんよね。

そこでこの章では、あまり5W1Hに縛られないで、読みやすい介護記録を書くコツをご紹介します。

そもそも5W1Hとは

5W1Hがよくわからないという人のために、少しだけおさらいしておきます。こだわる必要はないとお伝えしたので、ここはさらっと読んでおくだけでいいです。

5W1Hとは、

  • When(いつ)
  • Where(どこで)
  • Who(だれが)
  • What(なにを)
  • Why(なぜ)
  • How(どうした)

を使って記録を書く方法です。

この5W1Hを使って記録を書くと、分かりやすい文章を作る上でのポイントを押さえながら書くことができるようになるので、どこの介護現場でも推奨されているのはこのためです。

より詳しく5W1Hについて知りたい方は、介護記録の5W1Hを使った書き方と例文を読んでおくと理解が深まります。

1つの文章は短めに書くようにしてみよう

介護記録でよく目にするのが、とにかく長い文章で書かれている記録です。

以下、悪い例と良い例をひとつずつみていきましょう。

【悪い例】

午前中、朝食後にトイレ誘導行いそのままソファにて過ごされ、途中一度立ち上がりがみられたが声をかけると居室に戻りたいとのことで誘導するも、ふらつき見られたため危険と思い車いすを使用するように促すが、本人が拒否されたためそのまま介助にて歩行される。食堂から居室までの歩行は膝折れの危険があり転倒のリスクもある為、要車いすを検討する。

この介護記録は、一見するとたくさん書いてあるように見えるんですが、よく読んでみると必要な情報はとても少ないというケースです。

そして、長文なのでとても読みずらいのもこういった介護記録の特徴です。

介護記録は、1つの文章はなるべく短めに書くようにして、その中に必要な情報を入れ込んでいきましょう。

【良い例】

9時10分、朝食後から食堂横のソファで過ごされていた佐藤さんが、ソファから立ち上がられる。介護士の田中が声をかけると「部屋まで連れていって」と仰る。歩行をサポートしていたが途中でふらつきが見られた。他の介護士に声をかけて車いすを準備してもらったが、ご本人が「このままで大丈夫」と仰ったため、そのまま居室までお連れする。

食堂から居室までの歩行は、距離が長いため途中で疲れてしまうこともあるご様子である。無理のない範囲で歩行をサポートしつつ、歩行中はこまめに声をかけていく。ご本人が必要とされれば、食堂から居室までの移動は車いすを使用することも検討する必要があると考える。

いかがでしょうか?1つ1つの文章が短めに区切られていて、読んでいる側にもより伝わりやすい文章になっているのがわかると思います。


客観的事実と主観を分けて書いてみよう

先ほどの良い例を見てみると、途中で1行空いているのがわかると思います。

上段の部分が客観的事実に基づいた介護記録、そして下段がケアを行った介護士の主観で書かれた介護記録です。

介護記録は、客観的事実と主観を分けて書く必要があります。

それはなぜかというと、1つの介護記録の中に、これらの客観的事実と主観が混同して書かれていると、「問題点やケアを行った内容は何なのか」、それに対しての「解決策や介護士が気づいたことは何なのか」が分かりにくくなってしまいがちになるからです。

客観的事実は、実際にケアを行った内容や、ご本人の言動を書くようにします。

主観は、日ごろからご本人を観察・ケアしている介護士本人が気づいたこと、感じたことなどを書きます。

例えば、「レクでカラオケに参加され楽しまれる」は客観的事実と主観が混同している文章となります。

「レクでカラオケに参加される」が客観的事実で、「楽しまれる」は「楽しそうにしていたから」という介護士の主観ですよね。

ご本人が「楽しかった」と仰っていれば、「レクでカラオケに参加され『今日のカラオケは楽しかった』と仰っていた」と客観的事実として書くことができますが、そうでない場合は書くべきではありません。

このように、介護記録は客観的事実と主観を分けて書くのが、読みやすい介護記録の書き方への近道です。

時間と場所、事実と根拠を意識して書いてみよう

5W1Hにこだわらずに介護記録を書くコツとして、5W1Hの5つの「W」と1つの「H」をそれぞれ分けて書くという方法があります。

例えば、

  • 時間と場所(何時に、どこで)
  • 事実と根拠(実際に行ったケアの内容、なぜそのケアをしたのか)

これらをそれぞれつなげて書くことを意識するだけで、介護記録はとても書きやすくなります。

【例文】(時間場所

23時40分、居室で眠られていた佐藤さんがフロアまで歩いて出てこられる。

【例文】(事実根拠

「まだ夜の23時40分ですよ」ということをお伝えすると、「じゃあもう1回寝よう」と仰り居室に戻ろうとされる。介護士の田中が歩行をサポートして居室のベッドまでお連れする。

いかがでしょうか?これで1つの介護記録の中に5つの「W」が含まれるようになりました。ちゃんと「だれが」も含まれていますよね。

5W1Hが難しいと思っている介護士さんは、1文の中にすべて入れようとするから難しくなってしまっているケースが多いようです。

それぞれの「W」を1度分解して、そこから書きやすいものをつなげて書くようにすれば、そう難しいことではないというのがお分かりいただけると思います。

ちなみに、残る「H」ですが、これは上の例文で言うと「結果」になりますので、

【例文】(結果)

ベッドに入られる。時間を置いて様子を見に行くと、再び眠られていた。

となります。

この書き方に慣れてくれば、5W1Hをそこまで意識しなくても、自然と読みやすい介護記録が書けるようになっていきます。


まとめ

介護記録を読みやすく書くということは、それを読む他の介護士さんや看護師、ケアマネとも情報共有がしやすくなるということにもつながります。

そして介護記録は、ケアを行った証拠となる大切な書類のひとつです。

介護記録に必要な情報をメモなどで整理しておくようにすると、あとで思い出しながら書く、ということも少なくなります。

介護記録にかける時間をなるべく減らして、他のサービスにもっと時間を使えるようになれば、ケアの質は今よりもっと上がると思います。

「残業を減らすため。」

「サービスの質を向上させるため。」

それぞれの介護士さんにとっての考え方は違っても、働きやすい職場にするという意味では同じだと、私は考えます。

これを読んだ介護士さんが、長く続けていける職場になればいいなと思います。

 

スポンサーリンク

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*