多くの介護施設や事業所において、そこで働く介護士さんの人材育成はとても重要です。
適切な人材育成を行うことで、介護の質を向上させると同時に、長く働ける職場で在り続けるための離職率の防止、つまり職員の定着率の向上を図ることもできるようになります。
今回ご紹介するアセッサーも、新たな人材育成の仕組みのひとつとして、介護プロフェッショナルキャリア段位制度が開始となった平成24年度から、ここ数年で特に注目されているもののひとつとなります。
では、アセッサーとは何か?介護プロフェッショナルキャリア段位制度とは?
まだアセッサーという言葉自体、あまり聞いたことがないという人も多いと思います。
そこで、このページではアセッサーの役割と、アセッサーになるための5つの条件を中心に、介護プロフェッショナルキャリア段位制度とはどのようなものなのかを、分かりやすく解説していきます。
目次
介護プロフェッショナルキャリア段位制度とはなにか
アセッサーの役割を説明していく前に、まずはその基盤となる介護プロフェッショナルキャリア段位制度について解説していきます。
介護士の資質向上を促進するための制度がキャリア段位制度
始めに知っておいていただきたいことがあります。
それは、この介護プロフェッショナルキャリア段位制度は、「介護士の資質向上を促進することが大きな目的」だということです。
介護士の資質が今よりも向上すれば、介護を受ける利用者へのケアの質は自然と高まり、それは同時に人材育成にもつながる、というものです。
介護プロフェッショナルキャリア段位制度は、施設や事業所が人材育成のツールとしても活用ができるようになっているということを、まずは理解しておきましょう。
バラバラだった評価基準を共通のものにするための制度
これまで人事考課制度などの職業能力を評価する仕組みは、各施設や事業所ごとに作られた職業能力評価基準をもとに、介護士さん一人一人の評価を決めている部分が多くありました。
しかしそれでは、それぞれの職場で介護士さんの評価がブレたものとなってしまい、介護士さん一人一人の知識やスキル(能力)が、本当の意味では客観的に評価されたものではないという考えを持つ施設や事業所も多かったようです。
そこで、これまでの職業能力評価の仕組みに加え、新たに誕生したのが「介護プロフェッショナルキャリア段位制度」です。
介護プロフェッショナルキャリア段位制度は、新たに職業能力を評価する仕組みを作ることで、これまでバラバラに行われていた職業能力評価に共通のものさしを導入して、介護士さんの知識やスキル(能力)を客観的に評価するというものです。
これによって、施設や事業所ごとにバラバラだった評価が、大きく偏ることなく一定の評価ができるようになるというメリットが生まれました。
介護プロフェッショナルキャリア段位制度の仕組み
この章では、介護プロフェッショナルキャリア段位制度の仕組みについて解説していきます。
仕組みを理解しておくことで、アセッサーとは何をするものなのかということが段々と分かってくると思いますので、ひとつずつ見ていきましょう。
「わかる(知識)」と「できる(実践的なスキル)」の両面を評価できる
介護プロフェッショナルキャリア段位制度では、これまでのような資格を持った介護士さんへの単純な評価とは違います。
「介護福祉士の資格を持っているのだから、介護のプロらしい知識や技術はあるに違いない」
と、このようにまずは資格を持っていることに対して評価を受ける傾向にありました。
しかし、実際のところは資格を持っていても、一人一人の知識やスキルは大なり小なり違っているという矛盾が生じていました。
資格だけの評価方法では、よりレベルの高い介護を実践していても、そうでない人と比べる場合の評価基準が非常に曖昧だったのです。
そこで介護プロフェッショナルキャリア段位制度では、「わかる(知識)」と「できる(実践的なスキル)」の両面を評価できるような仕組みを作ることで、これらの矛盾を解消していこうとしています。
特に重視されるのが「できる(実践的なスキル)」の評価で、これはこれまでの資格制度や研修制度の関係上、ある程度の知識はあっても、介護現場での実践的なスキルが伴っていない場合も多かったことから、より重点的に評価されるようになっています。
7段階のレベル認定が行われる
介護プロフェッショナルキャリア段位制度では、介護士さんの介護レベルに応じて7段階のレベル認定が行われます。
制度が始まってまだ数年ですので、当面はレベル1からレベル4までの4段階までの評価となっていますが、将来的には全7段階でレベル認定が行われるようになる予定です。
レベル認定は、レベル1のエントリーレベルから始まり、レベル4からはプロレベルと認定されるようになります。
- レベル1:初任者研修を受講し、基本的な知識や技術を習得している
- レベル2:一定の指示のもとで、決められた手順通りに基本的な介護が実践できる
- レベル3:指示等がなくても一人前の仕事ができ、他職種との連携も取れる
- レベル4:リーダーシップを発揮し、部下に指示や指導ができる(主任、介護リーダー等)
このように、レベル1からレベル4までの評価基準が作られており、基準をクリアしているレベルに応じて、レベル認定が行われます。
では、「わかる(知識)」と「できる(実践的なスキル)」の評価基準はどうなっているのかを見ていきましょう。
「わかる(知識)」の評価
「わかる(知識)」の評価は、取得している資格の有無によって評価されます。
- レベル1:介護職員初任者研修修了者
- レベル2:レベル1と同様
- レベル3:介護福祉士養成課程又は実務者研修修了者
- レベル4:介護福祉士(国家試験合格者)
「できる(実践的なスキル)」の評価
「できる(実践的なスキル)」の評価は、介護士さんの普段の仕事の様子や業務の記録等を見て評価されます。
- レベル1:評価準備段階のため評価されない
- レベル2①:基本的な介護技術を用いて実践できる
- レベル2②:レベル2①に加え、一定の範囲で利用者のニーズや状況に応じた介護が実践ができる
- レベル3:レベル2①に加え、利用者のニーズや状況に応じた介護を他職種と連携して実践できる
- レベル4:レベル3に加え、地域包括ケアシステムへの理解、リーダーシップの発揮、指示・指導等
この「わかる(知識)」と「できる(実践的なスキル)」の両面から評価を行うわけですが、「できる(実践的なスキル)」の評価についてはより客観的な視点からの評価が重要とされているため、内部評価と外部評価の2段階での評価を行います。
外部評価は、シルバーサービス振興会と契約している第3者機関が再度評価を行います。
評価結果は転職時のデメリットを軽減させてくれる
転職をする際、デメリットとなるのが「自分の仕事ぶりを客観的に評価したものがない」ことです。
これまでは、履歴書や職務経歴書に仕事で得た成果や自己PRを書き込んで、自分がどのような人材であるかを最大限アピールする必要がありました。
ですが、この評価結果を合わせて書き込むようにすることで、自分の知識やスキルがどのくらいあるのかを「客観的なデータ」のアピールポイントとして活用できるようになります。
自分を客観的に評価したものがあるのとないのとでは、雇用する側からしてみれば安心感が違ってきます。
これも、介護プロフェッショナルキャリア段位制度の強みです。
まだまだこの制度を導入しているところのほうが少ないですが、今後は各施設や事業所が共通の評価基準である段位制度の評価結果を参考にするのが当たり前になる時代が、そう遠くないうちにやってくると予想されます。
段位制度のことを全く知らないところはないとは思いますが、もし自分が評価を受けているのであれば、転職時には忘れずに活用しましょう。
アセッサーとはなにか
介護プロフェッショナルキャリア段位制度の仕組みは理解していただけたでしょうか?
それを理解した上で、次にアセッサーについて解説していきます。
アセッサーとは段位制度の評価をする人、評価者のこと
アセッサーは評価者とも呼ばれ、介護プロフェッショナルキャリア段位制度にとって重要な存在となります。
前述した介護プロフェッショナルキャリア段位制度の仕組みを理解し、「わかる(知識)」と「できる(実践的なスキル)」の評価を行うのがアセッサーです。
アセッサーには客観的な視点からの評価が求められます。評価は、先ほどのレベル1からレベル4までの評価基準に沿って行われます。
アセッサー(評価者)になれるのは認定レベル4以上から
アセッサーになるためには、認定レベルが4以上の人で、アセッサーになるための講習を受講・修了し、アセッサーとして登録する必要があります。
アセッサーになるための流れは、以下のようになっています。
- アセッサー講習の受講を申請(申請書の提出)
- シルバーサービス振興会による申請書の審査・承認
- アセッサー講習の受講①(テキスト)
- アセッサー講習の受講②(e-ラーニング)
- アセッサー講習の受講③(トライアル評価の実施)
- アセッサー講習の受講④(集合講習への参加、模擬評価、振り返り、確認テスト)
- アセッサー修了証の交付
- アセッサー登録
アセッサーに登録するためには、講習修了後から2ヶ月以内に、1名以上の評価を開始する旨を実施機関へ届け出を行う必要があるので注意しましょう。
アセッサーは2名以上が望ましい
アセッサーが事業所内に1人しかいないところもまだ多いようですが、アセッサーは事業所内に2名以上が望ましいとされています。
その理由のひとつとして、「わかる(知識)」と「できる(実践的なスキル)」の内部評価を行う際の相談がしやすいという点が挙げられます。
客観的な視点での評価が求められているアセッサーとはいえ1人の人間が評価をするわけですから、そこには私情や甘さが入ることもあると思います。
アセッサーが2人いれば、相談しながらより客観的な視点での評価が行えますので、第3者機関による外部評価とのズレも少なくすることができるようになります。
さらにもうひとつの理由として、アセッサー同士の評価がしやすくなるという利点があります。
アセッサーは自身を評価することはできませんので、そこにもう1人のアセッサーがいるとお互いを評価し合うこともできます。
アセッサーのもう1つの役割
実は、アセッサーには被評価者を評価するだけではなく、もう1つ重要な役割があります。
人材育成(OJT)こそアセッサーの真骨頂
介護士さんを評価することだけがアセッサーの役割ではありません。
それよりも重要とされているのが人材育成(OJT)です。
このOJT(On the Job Training)こそがアセッサーの真骨頂とも言えるもので、介護士さんたちのスキルアップのための具体的な方策を一緒に考え、スキルアップの支援をしていくことがアセッサーに期待されていることであり、重要な役割です。
OJTを簡単に説明しておくと、上司が部下に対し、職場での日常的な業務を通して、仕事における知識や技術、情報収集や問題解決の方法、接し方(言葉遣いやマナーなど)を計画的・意識的・継続的に教育していくことで、その成果が仕事の成果として反映されるようにすることです。
部下の相談に乗る、分からないところは教えてあげる、といったこともOJTの一環です。
評価を受けた介護士さんが、今後どうすればより高いレベルの認定を受けられるようになるのか、評価した内容から課題はどこにあるのかを抽出して、スキルアップ・キャリアアップのための方法を、その介護士さんと一緒に考えていくようにすることが大切、ということです。
アセッサーはリーダーシップを発揮してチームケアの向上を目指す
OJTは、どちらかというと「部下に寄り添って一緒に頑張る」というイメージを持っている人は多いですが、それだけではありません。
介護の管理的立場にいるアセッサーは、自らがお手本となって積極的に行動することも大切です。
アセッサーがリーダーシップを発揮して積極的に行動すれば、周りの介護士さんたちにもその影響は自然と広がっていきます。
「なぜこれをやるのか」を事前に説明しておくことも大切ですが、ときには行動した後に根拠を説明して新たな発見をさせてあげることも指導の1つです。
アセッサーはチームとしての目標がブレないように、常にリーダーシップを発揮できる立場でいることを意識しておくようにしましょう。
キャリア段位制度は介護士の待遇改善につながるのか
評価認定を受けた介護士さんにとっては、評価を受けることでどのように自分たちの待遇が変わるのかと、疑問に思う人も少なくないでしょう。
この章では、介護プロフェッショナルキャリア段位制度の導入で、私たち介護士の待遇がどのようになるのかを説明していきます。
劇的に待遇面が改善されるということはない
介護プロフェッショナルキャリア段位制度は、冒頭で述べた通り人材育成を大きな目的とした制度です。
そのため、たとえレベル4の認定を受けたとしても、毎月の給料や賞与が大幅に上がる、といったようなことは起こりません。
賞与などは、各施設や事業所で使われている既存の人事考課制度(勤務態度、個人の業務実績などを評価する仕組み)や、会社の実績等を勘案して決められます。
キャリア段位制度の評価結果が多少の影響を与えることもあるとは思いますが、過度な期待はしないほうがいいでしょう。
ですが今後、レベル認定が7まで解放されれば、評価結果の影響力は大きく変わるかもしれませんので、今のうちに資格取得や、知識やスキルを向上させておいて損はないと思います。
転職をすれば給料アップも見込める
前述した通り、転職時のデメリットを軽減できるキャリア段位制度の評価結果を上手く活用すれば、転職することで今の給料を2~3万アップさせることができるかもしれません。
転職は、自分の希望する条件で探す方法を知っていれば、その後の毎月の給料をアップできる職場を見つけて再就職することもできるようになります。
その方法が、転職サイトを利用するというものです。
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今の時代、履歴書や職務経歴書もPCで作るのが当たり前になってきています。一度作ってしまえば、あとは文章を少し変えるだけで使いまわしもできるので無駄がありません。
昔のように、手書きの履歴書にこだわっているところのほうが少なくなってきています。
転職については、介護の転職を好条件で成功させるためにやるたった1つのことが参考になると思います。
履歴書の書き方については、介護の転職で押さえておきたい履歴書の書き方や、履歴書で注目されやすい介護の志望動機と自己PRの書き方を参考にしてください。
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